※この記事では、執筆者の浦野を「祥吾」、創業者の井桁を「ハンさん」と呼び合っています。
旅は、目的地に辿り着くことだけが目的ではない。 むしろ、目的地に辿り着けなかったからこそ出会える景色や人々がいる。インド・カリンポンでの経験は、私にそんな「旅の真髄」を教えてくれた。
絶望からの方向転換:シッキムへの憧れ

ダージリンでの滞在を終え、一旦シリグリに戻った私たち(祥吾とハンさん)は、次なる行き先を検討していた。Googleマップを眺めていて目に飛び込んできたのが「シッキム」という地名だ。
調べてみると、そこには壮大な自然環境が広がっているらしい。さらに、外国人の立ち入りには特別許可証が必要だという。その「行きにくさ」さえも、他ではできない体験ができる証拠のように思え、私たちの冒険心は最高潮に達していた。
意気揚々と許可証の発行所へ向かった私たち。しかし、そこで衝撃の事実を告げられる。 「今は大雨による洪水で道が通行止め。シッキムには行けないよ」
その日のニュースになるほどの激しい洪水。諦めるしかなく、肩を落として立ち尽くす私たちに、窓口のスタッフのおばちゃんたちが優しく声をかけてくれた。「カリンポンなら今でも行けるわよ」。 その親切な言葉を信じ、私たちは行き先を急遽変更。その日のうちにカリンポン行きのバスに飛び乗った。
濁流の横を抜けて、未知の街へ

聞いたこともない街、カリンポン。 バスは想像を絶する悪路を進む。窓の外を見ると、洪水の爪痕が生々しく残り、すぐ隣を巨大な川が濁流となって渦巻いていた。いつ崩れてもおかしくない道。正直、恐怖で生きた心地がしなかった。
しかし、命からがら辿り着いたカリンポンは、これまで見てきたインドとは全く違う世界だった。中国に近い影響からか、人々の顔立ちも、並んでいる料理も、どこか東アジアの香りがする。
初めての日本人ゲストとして

カリンポンに滞在した2日間、私たちは一晩だけ現地の人の家に泊めてもらった。 3世代が同居するその大家族は、初めての日本人ゲストである私たちを、家族のように温かく迎え入れてくれた。
カリンポンのこと、家族のこと、そして私たちのこれまでの旅のこと。言葉の壁を越えて、夜遅くまで語り合った。行くまでは名前すら知らなかった場所で、偶然の重なりがなければ出会うことのなかった人々と、心を通わせる。
これが「旅」だ
計画されたツアーでは決して味わえない、この「予期せぬ出会い」こそが旅の面白さだ。 自分たちの足で、自分たちの直感で進むからこそ、自分たちだけの経験が生まれる。
目的地に辿り着けなかった「失敗」が、結果としてかけがえのない思い出へと変わる。 カリンポンの家族の笑顔を思い出すたび、私は思う。 旅は、予定通りにいかないからこそ、人生を豊かにしてくれるのだと。