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フィリピン・サマル島(後編):野生の鼓動と、海亀が教えてくれた共生の形

フィリピン・サマル島(後編):野生の鼓動と、海亀が教えてくれた共生の形

※この記事では、執筆者の浦野を「祥吾」、創業者の井桁を「ハンさん」と呼び合っています。

前編では、台風を避けて辿り着いたサマル島で、漁師のNanaさん一家と出会い、「幸せの尺度」について考えさせられたエピソードをお伝えした。 Nanaさんと別れた後、私たちは再びバックパックを背負い、島を一周する歩き旅を再開した。

宿のホスト・Jemと「海亀」の噂

じりじりと照りつける太陽の下、アプリで見つけたその日の宿を目指して歩き続けた。辿り着いた宿で、ホストの女性・Jemが差し出してくれた冷たい水が、乾ききった体に染み渡った。

宿には一頭の犬がいて、私たちの他にはゲストもいない。裏手には宿泊者専用のプライベートビーチが広がり、そこには自由に使えるカヌーが置かれていた。 Jemと話していると、彼女がふとこう言った。「このあたりの海には、海亀がいるわよ」。 その一言で、私たちの次の目的が決まった。海亀と一緒に泳ぐこと。それは、この自然豊かな島での最高の冒険になるはずだった。

カヌーでの決死行:自然の猛威を知る

翌朝、本土に停滞する台風の影響か、空はどんよりとした雲に覆われていた。 Jemから「数キロ先に見える小さな島の周りに海亀がいるかもしれない」と聞き、私たちはカヌーで出発した。前にはハンさん、後ろには私。

しかし、前日の穏やかさが嘘のように、海は荒れていた。高い波に翻弄され、どれだけ必死に漕いでも一向に前に進まない。 「ハンさん、サボらないでくださいよ!」 最初はそんな冗談を言い合っていたが、次第に笑い声は消えた。潮流に流され、自分たちが今どこにいるのかも分からなくなる。戻れるのかという不安が胸をよぎった私たちは、島行きを断念し、必死の思いで宿の方角へとカヌーを向けた。

ようやく辿り着いたのは、宿から数百メートルも離れた見知らぬ浜だった。 自然を甘く見てはいけない。思い通りにいかない不自由さもまた、旅の一部であることを私たちは身をもって学んだ。

ついに訪れた、静かなる出会い

それからさらに2日後、私たちはサマル島で最後となる宿に辿り着いた。 玄関のドアを開けると、そのまま海へと繋がっているような素晴らしいロケーション。私たちは到着して早々に、三度(みたび)海へと潜った。

美しいサンゴやヒトデの間を泳いでいると、視界の端に何かが動いた。 「ハンさん!いた!」 興奮で声を上げたが、その姿はすぐに深い青の中へと消えてしまった。

翌朝、管理人の「海亀は早朝によく来る」という言葉を信じ、私たちは露店で買った簡単な朝食を済ませてすぐに海へ入った。すると、その瞬間は突然訪れた。 「海亀……!」 今度は、すぐ目の前にいた。触れそうなほど近くを、悠然と泳ぐ海亀。あまり刺激しないよう、私たちはゆっくりとその姿を追いかけながら、静かに一緒に泳いだ。

観光地化されないでほしいと願う理由

海亀は、どこか特別な場所にしかいない生き物だと思っていた。 けれどこの島では、すぐそばに住民がいて、そのすぐ隣の海に彼らが当たり前のように暮らしている。 長年続いてきた「自然と共存する生活」が今も残っているからこそ、この奇跡のような光景が守られているのだと感じた。

「この場所が、どうかこのまま変わらないでほしい」 あまりに美しい自然を前にすると、利便性を追求する観光地化を拒みたくなるような、複雑な感情が湧き上がってきた。

台風が連れてきてくれた宝物

もし、マニラで台風に出会わなければ。 もし、雨雲レーダーでこの島を見つけなければ。 私たちはNanaさんとも、Jemとも、それからこの海亀とも出会うことはなかっただろう。

トラブルや予定変更が、結果として人生を豊かにする最高の体験を連れてきてくれる。それこそが、私たちがバックパックを背負って旅を続ける理由だ。 サマル島で見つけた「絶対的な幸せ」と「自然との共生」。その記憶を胸に、私たちは次の目的地へと歩みを進める。

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